思春期の多感な時期に
自らに降りかかった不幸を恨み、他者へ鬱憤の矛先を向けた陰湿で凄惨な行為によって
踏み躙られ奪われる青春と一生、消えない傷を負う者達
苦しみを共にする者が、ひたすら苦しみ続け‥居なくなる…
耐え続けていた少年が、生きることへの支えにしていた僅かながらに唯一の存在さえ、奪おうとする限りなく苦しみを与え続ける者に下されるべき裁きは‥
少年少女たちにとって【リリイ】とは、
まるで女神のように目に映る存在なのか?
同じ時空を生きる人間に違いはないのは勿論とありつつ、眼を背けたい現実とは別次元の雲の上にいて欲しい存在なのか?
苦しみから逃れたい一心、と願いから救いを求め、彼女が発する波動のようなものに、ずっと触れていたい
他に何処に救いを求めたらいい…
誰にも胸の内を開かせずに、本心を曝け出せない彼等の置かれた心境を思うだけで、息苦しく生き地獄を生きる事の苦しみに、此方は無力に傍観して【リリイ】以前に手の届くこともなく、何もできることもない虚無を感じながら胸を締め付けられる…
どうか善良な少年を守り、悪しき歪みを持った少年の心根から受けた多くの苦渋を解放させる救いとなって欲しいと、願わずには報われないリアルな感触を抱く岩井俊二作品のなかでも、暗部を描いた鮮明な映像質感による鑑賞体験は以降、半年以上は頭からストーリーが離れない強烈な印象を受け、残した作品であった。