ご婦人をお嫌いな男はいないそうで、芝居の嫌いな女性もいないそうです。いったい歌曲はつまらないし、概してオペラもイッコもおもろないものですが、「フィガロの結婚」だけは例外、これは男にとってもおもしろい歌劇。音楽をよく知らない男でもそう思う。言わずもがなでしょうけれど、だいたい、モーツァルトにはハズレはないと思うのですが、誰の「フィガロ」でもこれまたハズレはないはずです。プリチャードのもベームのもショルティのもアーノンクールのDVDもいい。
だけど、芝居としては若いソプラノが演じるべき愛らしい蝶々さんのケルビーノがビタッとその役にはまって演出され、また演技しているこのバレンボイム盤に対してはレヴューの書き甲斐があるというものです。話しが長くなるから立ち役の連中のことはちょいと置いといて、キリテカナワとコルトバシュ、ヤノヴィッツ、ルチアポップ、エヴァメイもイザベルレイもニキテアヌも、もちろんフォンシュターデも素敵ですが、歌のうまさはもちろんだけど芝居だから見た目も演出も芝居振りも評価の対象となるはずで、このバレンボイム盤はパトリシアリズレーという愛らしい蝶々さんのために私にはかけがえのない「フィガロ」になっています。11年前の1999年のベルリン国立歌劇場公演だそうで、今のリズレーはルチアポップに代わるスザンナをやっているのかしら、ロジーナ役を演じるときにはキリテカナワみたいなのかそれともヤノヴィッツみたいなのか?
ところで、このDVDジャケットは地味ですなー。