公開当時は、証文の出し遅れみたいな批評も見られました。ベトナム戦争終結から5年近く過ぎての映画化だったからです。初めて観たときは、反戦ミュージカルというよりも、利己的なものを追求するのでなく仲間(隣人)を思いやる自由な精神(60年代後半のスピリット?)を描いた映画だと感じました。ここで描かれるヒッピーたちは、自由気儘に生きているように見えますが、人に無関心ではなく、よそ者を受け入れる包容力も持っている。グローバル化、一国主義が叫ばれ、分断がすすむ今だからこそ、この映画は静かではあるが力強いメッセージを発しているように思う。自分のことばかりに閉じこもりがちな私たちにも訴えるものがある。
映画としては、映像的に凝ったユニークなミュージカル。セントラルパークにロケした冒頭の「アクエリアス」のシーンから引き込まれる。トワイラ・ザープが振付けたダンス(群舞)がユニークで素晴らしい。一見の価値ありです。マリファナ、LSDにトリップして見る白昼夢「ハレクリシュナ」は、ぶっ飛んだ映像で面白い。笑いながら観ているうちに、顔が強張ってしまうラスト「レット・ザ・サンシャイン」も印象的。どのシーンもいいのですが、個人的には、トリート・ウィリアムズが上流階級のパーティで歌い踊る「アイ・ガット・ライフ」が大好きです。彼の人懐っこい笑顔が、この映画の魅力(精神)を表しているように思います。以上、2004年版DVDのレビューをちょっと手直しして再掲してみました。当時も今も世界は、あまり変わっていないように思いました。
2004年発売のDVDからブルーレイへの買い替えですが、画質、音質ともにあまり変わっているように思えない(見比べたわけではありませんが)。 冒頭のオクラホマの風景、灰色の空のざらつき感でまずガッカリ。黒を背景に浮かび上がるアジア人少女が「ウォーキングスペース」を歌うところ、ポツポツと白い点が入るところなど、細かく見ると傷がある。DVDをそのままブルーレイにしたような印象。はじめての人だったら、この名作をこの値段だったらお薦めですが、買い替えはどうなんでしょう。綺麗にリマスターして、特典映像も付けて出し直してくれないだろうか。惜しくも監督は亡くなってしまったので制約はあるかと思いますが、出演者を揃えたメイキング映像などができたら見てみたい。振付けトワイラ・ザープのドキュメントを付けるとか。願望は広がります。この映画のサウンドトラックCDが出ていますが、映画に使われていない曲も入っていて、どの曲も良くて、くりかえし聴いています(LP2枚組のときから聴いています)。CDは1枚に収まっており、音も良くお薦めです。